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A.T/制作日々


by flaneur555

みちくさ市と油絵おばあさん

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みちくさ市で出店していた駐車場の向かいに住むおばあさんは、一人でオープンスタジオをしていた。戸口を開けはなって3方の壁全面に30点くらいの額装された油絵を展示し、所在なげに椅子に腰掛けて道行く人を眺めていた。流れる人々は露店に夢中で誰もおばあさんの絵には関心をしめさず、たまに通りかかる近所の人と一言二言挨拶を交わすだけだった。この家の表に設置されている3台の飲料自販機はどれも100円均一でおつりの小銭が足らない時に何度か缶コーヒーを買って、なんとなく絵を見に中に入ってみると、おばあさんは通りから見えない場所に置いてあるランニングマシンで運動していた。すぐにマシンからおりて来て絵の説明をしてくれて、指差す先には、今すぐにでも油絵が描けるようにセッティングされた絵の具の載ったパレットとイーゼルには、まっさらな白いキャンバスが掛かっていた。みちくさ市に合わせてだろうか、カラフルな端切れでエコバックみたいなのも沢山作っていて、壁際のテーブルに小さく値段を書いた紙と共にチョコンと置いてあった。ほんの数分見せてもらいお礼を言って出店場所に戻る時、エコバックの載ったテーブルを道行く人に見えやすい表の路上に出したらどうかと言いかけたけれどなんとなくやめた。今度出店する時は油絵おばあさんの家の前が良いなーと思った。商店街の普通の家々がみんなオープンスタジオになって、古着や不要品売ったり、油絵や生け花見せたり、将棋やマージャンがうてたら、きっと雑司ヶ谷に引っ越してきたくなるだろうなーと、みちくさ市の未来を想像した。
一度自分の家でもオープンスタジオをしてみたいと油絵おばあさんを見て強く思った。
by flaneur555 | 2010-03-23 01:06 | 古本